写真・川上信也/文・嶋田絵里

 春の室見川、筑肥橋川岸(福岡市西区)に、ことしも「シロウオあります」の看板が立つ。
 シロウオ漁は江戸時代から300年つづく伝統漁で、産卵のため海から川へ遡上するシロウオを簗を仕掛けてとる。体長5センチ、ハゼ科の魚・シロウオは潮にのってあがってくるので、潮の満ち引きを利用し、満潮の前後2時間に、簗の先に置いた網をあげて獲る。昔は、市内の那珂川、多々良川でも網や四つ手による漁が行われていたが、いまは室見川のみである。
 シロウオ漁は、漁民ではなく、農民が川で得る収獲だった。
 「いまみたいに、野菜など作っていない米作だけの農家が多かったから、農閑期の2〜4月はちょうど手があき、つづけてこられたのではないか」と、シロウオ組合長・小石原義彦さん。2月初旬に行われた簗づくりでも陣頭指揮をとり、自らユンボを操って川底を整地した。
 小石原さんが組合に所属したのは、40年以上前。そのころは、組合員の数は16人だったが、現在は4人が組合のメンバー。それに加え、近くの市民や福岡大学の学生たちが川の清掃や簗かけの作業に参加する。
 「昭和40年代当時は、漁獲量も多く、1シーズン2000キロはありました。川沿いに仮設の店を建てて自分たちでお店を営んでいたし、博多の市場にも卸していました。それでも充分な量があったから、16人の組合員一人一人が、一升分のシロウオを自宅に持って帰ることができていましたね」
 河川の改修やシロウオの成育場所である博多湾の埋め立てなどで漁獲量は年々減少している。近年では、平成25年度までは196キロの漁獲量があったのが、平成30年度は45キロ、昨年の平成31年度は39キロと減少が著しい。
 それ以前の平成23年から、シロウオの産卵場所である室見川筑肥橋と上流の室見新橋間の環境整備、漁獲の簗づくりにも参加している福岡大学工学部・水工学研究室の伊豫岡宏樹(いよおか ひろき)助教も、シロウオの今後に警鐘を鳴らす。
 「洪水対策のため室見川の川幅が広がったことで川の流れる速度が遅くなり、それまで砂がたまっていなかったところに砂が堆積するようになりました。そのため、小石の裏に穴を掘って産卵するシロウオの産卵場所が砂に埋もれてしまうという現象が起きています。河川の洪水対策とシロウオの産卵場を守ることを両立させるため、組合、そして市民の方々と協力して、産卵場所の整備を行っています」
 ことしの産卵場の環境整備には、市民も含めて約150人の参加があった。シロウオ漁は福博に春の訪れを告げる風物詩。幕末の歌人・大隈言道もありがたく賞味している。
  のぼり得でかごに入りたるしろうをは
  水の落せる命なりけり  言道

「室見川のシロウオと簗」シロウオ漁 簗づくり・小石原義彦さん

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