写真・川上信也/文・嶋田絵里

 桃の節句、柳川の各家庭では、女児の誕生と健やかな成長を祈ってひな人形とさげもんが飾られる。
 「一昔前までは、その家に長女が生まれると親戚や地域の人々から届いたさげもんで奥のひな壇が隠れてしまうくらいお座敷いっぱいに飾られたものでした」
 そう語るのは、柳川市婦人会代表・藤木利美子(ふじき・りみこ)さん。藤木さんの案内で、婦人会一を誇るさげもんづくりの名手・山田玉美(やまだ・たまみ)さんを訪ねた。
 さげもんは、下げ輪に1列7個の細工(縁起ものの飾り)を7列結びつけ中央に2個の毬を下げた、桃の節句の吊り飾り。この一つ一つの飾りを一針一針ていねいに、表情豊かにつくるのがうまいと評判なのが山田玉美さんだ。
 「長寿を願う鶴と亀、災いが去るように元気に遊び回るようにと猿、五穀豊穣を願って米俵や三番叟(さんばそう)、おくるみ人形、ひよこなどさまざまな袋物を、着物の端切れや古布などを使ってつくります。とくに表情を描くときはかわいらしい表情になるように集中します」
 江戸時代の中期から後期に、柳川藩の奥女中が着物の端切れなどで子どものおもちゃや琴爪入れを作り、それらをさげて楽しんでいたのが始まりと言われているさげもん。山田さんは、学校の裁縫の授業で、そして嫁いでからはお姑さんや親戚のおばさんたちに習いながら、自然とつくれるようになっていったという。
 「気づいたらつくれるようになっていました。それでも長女のときは、たぶんおばさんたちに教えてもらいながら一生懸命作ったのだと思います」
 「むかしは、初節句めぐりをしてたよね。どの家もお座敷の戸の桟(さん)にずらっとさげもんが下がっていて、訪ねた人たちにごちそうをふるまってくれた。そのころは、見に来ていただくのが自慢だった。初節句めぐりをしていたから、地域の人みんなが、あそこに生まれた子はこの子ねというのがすぐにわかったよね」(藤木利美子さん)
 地域で子どもの誕生を祝い、その健やかな成長を願う。「いまでも、女の子が生まれるとわかったときから、お嫁さんたちは初節句に間に合うように作り始めますね」(山田玉美さん)
 吊り飾りの三大地、静岡県伊豆町稲取「雛のつるし飾り」、山形県酒田市「傘福」と柳川市「さげもん」で、「日本三大つるし飾りサミット」を開催し、交流を深めていたこともある。
 今年は、2月11日から柳川でさげもんめぐりが始まる。
「女子の健康を願うさげもん」 柳川さげもん・山田玉美さん

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