写真・川上信也/文・嶋田絵里

 紙縒りに糊を引き、乾かし固めたもので、進物にかけられた白紙を結ぶ。
 水引は、唐物の贈答品に四つ手をかけてくくった紅白の麻糸から伝わった。室町時代の武家文化のなか、進物の作法と水引き結びの礼法がさかんになり、江戸時代にその様式が完成されたという。また水引は、人の縁をつなぎ、禍を祓う「結び」の概念も併せ持つ。
 その古来伝統の水引で、博多の粋を表現するのが、ながさわ結納店(福岡市博多区上呉服町)の二代目、水引デザイナーの長澤宏美さんだ。祖父は博多最後の鬘(かつら)師・長澤吉太郎、父親は結納水引の『博多水引』をはじめた長澤宏昭さんである。
 「博多は、水引の産地ではないので、結納店の多くは水引細工を仕入れて販売していました。父は45年前に結納店を立ち上げ、『博多水引』と称して自らつくり販売をはじめました」
 もとは東京でグラフィックデザインをしていた長澤さん。結婚出産を機に福岡に戻り、両親の手伝いをするなかで水引消滅の危機と、伝統を残していくことの大事さに思い至ったという。
 「そのころ、友人宅のホームパーティーにワインを持っていく機会があり、ワインボトルに水引で梅の花をかたどった飾りをつけて持っていったら、とても好評だったんです。水引の新しいデザインを提案できる手応えを感じましたね」
 そうして生まれたのが、縁起のいい梅の花や松の葉をモチーフにした「博多ボトルリボン」だ。ワインやお酒を贈る際、瓶にかけて華やかさを演出する。他にも、正月飾りやインテリアとしての水引のデザインも手がける。
 「博多山笠の鉢巻のねじりをイメージしたものもあります。ねじり自体は伝統的なデザインにありますが、私の場合は、水引の束をねじり、そのふたつをさらにねじり込んで締め上げつくっています。配色も紺と白のみで、山笠男衆の粋とねじれの美しさを表現しています」
 常識を変えた部分も多い。色の組み合わせだ。水引には、紅白、金銀、黒白など伝統の色の組み合わせがあるが、長澤さんは、今の生活スタイルや用途に合わせた配色を提案する。
 「水引で黒というと仏事をイメージするかもしれませんが、差し色で使うと全体が引き締まり、ビジネスシーンにもふさわしいものになります。2016年のG7北九州エネルギー大臣会合で各国の大臣に贈呈した水引では、その国の国旗カラーでつくらせてもらいました」
 斬新なデザインを次々と生み出す長澤さんには多くの依頼が舞い込む。昨秋からは紳士服ブランド「TAKEO KIKUCHI」の水引ブートニエール(男性ジャケットの襟のボタンホールに差す飾り)を製作し、水引の新しい可能性を広げ続けている。

「博多の粋を水引で贈る」 博多水引 長澤宏美さん

トップページに戻る

前のページに戻る