写真・川上信也/文・嶋田絵里

 福岡県の中東部、山々に囲まれた谷間に、民陶の里・小石原(朝倉郡東峰村)がある。
 この地に、約340年前、小石原焼が誕生した。キメが細かく重みのある良質の陶土、その土を唐臼で碾く筑後川源流の水、釉薬の藁灰、窯の火を焚く薪など、皿山としての必要な条件がそろっている山間部だ。文献によれば、茶陶を焼いた高取焼の小石原鼓窯や民用品を生産した小石原中野窯などの近隣の古窯群が小石原焼の源であるという。
 小石原焼の特徴として挙げられる飛鉋、刷毛目、櫛目、打ち掛け、流し掛け、指掛けなどの技法を受け継ぎつつ、現代のライフスタイルにも合うよう、それぞれの窯元が創意工夫を加えている。新しい世代のための、新しい小石原焼を提案する和田義弘さん(39)は、鶴見窯元(昭和49年開窯)の2代目。小石原焼陶器協同組合青年部の部長を務める。
 「京都で伝統工芸の技術を学んだあと、家に戻り小石原焼の作陶を学び始めました。同じころ、店で接客をしていたとき、お客さんのなかには飛鉋が重厚すぎて苦手という人もありました。そういった方にも手にとってもらえるようなものが作れないかと考えたことがきっかけでした」
 飛鉋は、成型されてまもない半乾きの器面に轆轤の回転を利用して小刻みにつくられる文様である。時計のゼンマイを転用したしなやかな刃を当てると、一定の間隔で刻み目がつき、文様が形成される。和田さんは、回転速度をあげ、刃の当たる部分も少なくして線の間隔をあけることで、軽さをもたせた。
 「伝統的技法を活かしながら新しいことができないかと、いつも考えています。たとえば、釉薬なども、小石原焼の特色である緑や黄色の釉薬だけでなく、日用品である小石原焼を使う人の目線、とくに女性の感性を知るために、雑誌を見るなどして、はやっている色や光沢をつけるかどうか、などを参考にしています」
 昨年の九州北部豪雨では、小石原焼の窯元でも多くの被害が出た。
 「うちも落雷による火事で窯がなくなってしまいました。このあたりは被害が甚大で、いまも復旧作業が続いていますが、毎年5月と10月に開催している民陶祭にはとても多くの人が来てくれました。組合44軒のうち、青年部には11人が所属しており、福岡県の伝統工芸の作り手のなかでも小石原焼は若手の割合が多い方だと思います。みんなと切磋琢磨しながら、これからの小石原焼を盛り上げていきたいですね」
 今の時季から制作ピッチが速められ作品が蓄えられる。周囲の棚田にヒガンバナが咲いて、釉薬の原料になる藁が田んぼに干されるころ、伝統と新しさを備えた小石原焼を求めて、今年の民陶祭にも多くの人々が訪れることだろう。




「伝統から生まれる新味」 小石原焼・和田義弘さん

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