写真・川上信也/文・嶋田絵里

 福岡県は全国一の醤油メーカー数で、その数は91。各地域で地元産の醤油の味が愛されてきた。筑後地域も、醤油生産地の一つ。筑後平野で採れ、醤油の原料となる小麦、大豆、そして耳納連山が潤す清水を使ってつくられてきた。
 その筑後の恵みをもとに、明治7年(1874)創業から150年、木桶仕込みでの天然醸造醤油づくりをつづけているのが、久留米市宮ノ陣にあるクルメキッコー株式会社だ。
 「クルメキッコーは、地元で醤油づくりが上手だった初代の深町太吉が、150年前に深町醤油醸造場として始めた会社です。昭和に入り、桶などの容器がプラスチック製やステンレス製に変わるなか、五代目で私の父である深町吉秀(現社長)が『うちは昔ながらの製法をつづける。それが当社の特徴になる』という意思のもと、木桶での醤油づくりを守ってきました」(深町公二・社長室室長)
 昔は造り酒屋が使っていた木桶から酒が漏れるようになると醤油屋や味噌屋に譲られ木桶はリサイクルされていたというが、クルメキッコーでは、創業時から桶職人を抱えて天然杉の木桶をつくり仕込みに使ってきた。商売が大きくなるにつれて新しい木桶が追加され、いまでも修理しながら当時の木桶が使われている。100年以上使われてきた木桶には酵母や乳酸菌が染み込んでおり、それらがその蔵の醤油の味となっていく。
 「現在、当社の木桶は200本あります。タガを締め直したりして修復しながら使えば桶は100年保ちますので長く使っているものがほとんどです」
 醤油づくりは、まず蒸した大豆の中に炒って砕いた小麦を入れ、種麹を加えて、醤油麹をつくるところから始まる。醤油麹と塩水を木桶に入れ発酵させたものが「もろみ」。木桶の中では一年以上じっくりと発酵・熟成させていく。冬場は一週間に一度、夏場は三日に一度、仕込みを担当する職員が櫂棒を使って手作業で攪拌する。
 山に囲まれた久留米の冬の朝は冷え込む。
 「朝、蔵に来たら、まず木桶の中のもろみの様子を確認します。上の層の固形部分を櫂棒でかき混ぜて下の層の液体となじませ、もろみに空気を送ります。冬は発酵が落ち着いていますが、夏は発酵が進むので、ポコポコと気泡がはじける音がします」(製造部の轟 重昭さん)
 木桶で仕込む醤油の原料は、主に福岡県産の大豆・小麦と塩水だけ。代々使われている木桶と昔ながらの製法をつづける職人の心意気がクルメキッコーの味である。
「木桶の醤油づくり」クルメキッコー・深町公二さん

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