写真・川上信也/文・嶋田絵里

 コーヒー豆は、コーヒーベルト地帯でしか栽培できないと言われる。
 *コーヒーベルト:赤道を中心線として北緯25度線と南緯25度線の間。
 そんななか、福岡県柳川市(北緯33度)でコーヒー栽培に取り組むのは、椛島珈琲園の椛島大翔(だいしょう)さん(31)だ。
 イグサ栽培から始めた祖父・椛島績(いさお)さん。農業経営を法人化し、コメ・ムギ・ダイズの穀類からマンゴーなど南国のフルーツ栽培、それらの果物の商品化など、多角的な経営を行う父・椛島一晴(かずせい)さん[(有)杏里ファーム代表]。その後を継ぐ、3代目の大翔さんである。
 6年前からコーヒーの栽培をはじめ、現在のコーヒー豆の収穫量は年間60s。九州北部の、しかも冬には最低気温が氷点下になることもある福岡県の柳川でコーヒー栽培に取り組むとあって注目されている。
 コーヒー豆は、コーヒーノキという常緑樹の果実の種子の部分。発芽から3〜5年でようやく花が咲き果実が実る。春から初夏に白い花が咲き、晩秋に実が赤く熟す(コーヒーチェリー)。その実を手摘みし天日で乾燥させて種をとる(ナチュラル精選)。
 「学生時代は野球部で甲子園をめざしていたので、農作業を手伝う時間もなかったのですが、事業を引き継ぐため東京農業大学に進学しました。卒業後に視野を広げるために行ったオーストラリア、その後の海外農業研修でのアメリカ・ハワイでのコーヒー農園での経験から、日本でコーヒー栽培をはじめたらおもしろいのではないかと思いました」
 寒さに弱く、夏の強い日差しも苦手とするコーヒーノキを守るのが、15年前に杏里ファームがフルーツ栽培を行うために建てたビニールハウスだ。冬は空調と温室の効果で暖かく、夏の日差しと高温に対しては屋根に被せた遮光シートと屋根の開閉や室内換気扇で風通しをよくして対応している。その効果もあり、6年目の現在は収穫量も増え、デパートの喫茶店や一部スーパーなどにコーヒー豆を卸している。
 「柳川でコーヒーを生産する大きな利点は、収穫してから飲むまでの時間がとても短いことです。私はコーヒーのおいしさを決める重要な要素に鮮度があると思っています。海外の生産国で収穫して日本で飲めるまで約1年かかります。コーヒーは果実がいっせいには熟さないため、収穫期間は3〜4か月。そこからさまざまなプロセスがあって生豆になり、2か月かけて船で運ばれます。そうすると私たちが口にするまでに1年かかります。うちで生産したものであれば、最短2か月で飲むことができます。それは、ほんとうに大きな違いです」
 2050年には、地球の温暖化の影響で、コーヒー栽培適地が半減しコーヒーが飲めなくなると言われている。その対策としても、椛島さんは国産のコーヒー豆を増やしたいと情熱を傾けている。
「柳川のコーヒー栽培」 椛島大翔さん

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